SNS映えで話題化する施設集客とは?話題になる施設の違い

この記事のまとめ

SNSで話題になる施設は、来館者自身が発信したくなる体験を用意し、その投稿が次の来館者を呼び込む循環を作っています。SNS映えや話題化を施設集客に結びつけるには、空間設計と発信手法、そしてデータに基づく改善が欠かせません。本記事の要点は次のとおりです。

  • SNSでの情報発信が集客に好影響を与えたと答える施設は約7割にのぼります。
  • Z世代は訪れることと発信することが地続きで、投稿が次の来館動機を生みます。
  • 雰囲気や内装、同伴者との楽しみ方、限定性が来館意欲を押し上げます。
  • 横並び発想を避け、具体で語る発信とデータ改善が話題化を持続させます。


SNS映えと話題化が施設集客を変える理由

SNS映えと話題化は、施設集客の起点として存在感を増しています。


SNS映え・話題化・施設集客の関係性

SNSでの発信と口コミは、来館のきっかけとして影響力を増しています。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングが東海3県の主要集客施設を対象に実施した調査では、SNSでの情報発信が集客に好影響をもたらしたと答えた施設が約7割(73.5%)にのぼり、20年度調査の63.1%から割合が高まりました。客層の変化についても、SNSでの口コミを見た来訪者が増加したと回答した施設は約7割(68.3%)で、20年度調査の46.2%を上回っています(参照*1)。

この数値の伸びは、SNS映えする投稿が話題化を経て来館という行動に接続していることを示します。施設側の発信と来館者の口コミが両輪となり、集客の起点がオンラインへ移っている状況を確認できます。自館の発信が集客数の変化とどう連動しているかを見直す視点が、施策検討の起点になります。


UGCが来館動機を生む循環構造

ユーザー生成コンテンツ(UGC)とは、来館者が自ら投稿する写真や感想を指します。

Z世代の来館行動を理解するうえで、UGCは体験の中心的な推進力となっています。Z世代にとって訪れることと発信することは地続きで、SNS投稿を通じて体験が拡張し、他者の投稿が次の来館動機を生む循環が形成されています(参照*2)。

ミュージアム型施設のニフレルでは、訪問者の体験談としてUGCを掲載し、リアルな楽しみ方を紹介することで、来館者にとって親しみやすい環境を整えています。来訪のたびに新たな発見がある施設として、リピート訪問の動機付けにもつながっています(参照*3)。

つまり、投稿が投稿を呼び、来館が来館を呼ぶ構造が組み上がることが、SNS映えの効果を持続させる条件になります。施設運営者は、UGCを一度きりの露出で終わらせず、公式サイトや館内導線でも活用する設計を検討する余地があります。


話題になる施設の共通点

話題になる施設には、限定性や空間設計、多様な層への訴求という共通点があります。


「今しか体験できない」特別感の演出

話題化する施設は、来館の理由になる限定性を用意しています。

カウンターワークスと早稲田大学ショッピングモール研究会が実施した「Z世代の商業施設に関する実態調査」では、来館意欲を高める要素として次の回答が挙がっています(参照*2)。

  • 施設の雰囲気や内装が心地よい:42.0%
  • 友人や恋人と一緒に楽しめる:33.8%
  • ここだけで購入できる商品・ブランドがある:30.8%
  • 推しイベントやコラボ企画がある:21.0%
  • 期間限定で開催されるイベント・ショップがある:20.8%

限定性は投稿する側にとっての語れる理由になり、話題化のきっかけになります。自館の企画に、今しか体験できない要素を組み込めているかを確認する材料として使えます。


撮影・共有したくなる空間設計

撮影と共有を前提とした設計は、SNS映えを施設集客に接続する土台になります。

Z世代はSNS映えだけでなく、その場所でしか得られない没入感(イマーシブ体験)を重視する傾向にあります。こうした世代やライフスタイルごとの微細な変化を捉えきれないことが、集客に苦戦する大きな要因とされています(参照*4)。

没入感は、視覚的な派手さだけでは生まれず、体験の流れ全体で作り込む必要があります。館内動線や光、音、香りといった要素を撮影行動と重ねて設計することが、話題化する空間づくりの手がかりになります。


多様なターゲットへの魅力訴求

ひとつの魅力を全員に押し出すのではなく、層ごとの入り口を用意することが、話題の広がりを生みます。

ニフレルでは、幅広い層に施設の魅力を伝えて来館を促進するために、生きものの写真に加えて施設内のカフェやミュージアムショップのグッズ写真など、一日中楽しめる様子を視覚的に訴求しています。さらに、「ファミリーにおすすめ」「大人におすすめ」といったテーマ別のタブ分け表示を設置し、多様なターゲット層がそれぞれの楽しみ方を見つけやすいような活用を始めています(参照*3)。

層別の見せ方は、来館者自身が自分向けの楽しみ方を選び取れる状況を作ります。自館サイトやSNSで、誰にどの体験を届けているかを整理する材料として参考になります。


Z世代・若年層の来館行動と共有志向

Z世代・若年層は、短時間で効率よく楽しみ、同伴者とともに体験を共有する傾向があります。


短時間・目的達成型の行動特性

来館の頻度と滞在時間の傾向は、施設側の企画設計に直接影響します。

Z世代の商業施設に関する実態調査によると、来館頻度は月2〜3回が25.8%と最も多く、「週1回以上」「月2〜3回」「月1回程度」を合算した月1回以上の来館は74.1%を占めました。平均滞在時間は1時間前後が44.5%で最多となり、Z世代は長居よりも効率を重視し、必要な目的を短時間で済ませる行動傾向が見られます(参照*2)。

短時間で満足できる体験を用意し、来館頻度を高めてもらう組み立てが有効になります。企画の長さや動線の密度を、この滞在時間の実態に照らして見直す余地があります。


同伴来館とSNS投稿の連動

誰と来るか、その後にどう共有するかを重ねて捉えると、話題化の設計精度が上がります。

来館時には友人や恋人、家族など同行者のいる割合が66.3%にのぼり、単独来館の33.5%に比べ同伴来館が多数を占める実態が確認できました。来館後のSNS投稿では、「よくある」「たまにある」を合算した投稿経験ありの層が41.0%と一定規模存在し、共有したくなる体験が生まれていることがうかがえます(参照*2)。

若年層は観光やレジャー情報の検索と発信において、インフルエンサーのSNS投稿に特に頼っており、自治体や観光協会よりも企業や友人からの情報を参照する傾向があります(参照*5)。

同伴での体験は投稿の題材になりやすく、投稿は同伴者の次回来館へつながります。自館の演出が、二人以上で楽しめる要素を含んでいるかを確認する視点が有効です。


SNS別・話題化を生む発信手法

SNSでの話題化を生むには、プラットフォームごとの特性を踏まえた発信手法が欠かせません。なかでもInstagramでは、アカウント設計と投稿形式の使い分けが軸になります。


Instagramでのプロフィール設計とUGC活用

Instagramの運用では、アカウント自体の設計と、来館者の投稿の活用を並行して進めることが有効です。

下呂温泉の飲食店である下呂松葉は、以前からアカウントを持っていたものの、ほぼ更新しておらずフォロワー数も200〜300人でした。現在のフォロワー数は約2,000人まで増加しています(参照*6)。

また、前述のニフレルでは、施設を訪れた来館者が投稿した写真や感想を軸にターゲットを拡大する施策として、UGC活用ツールを導入しています(参照*3)。

アカウントの育成とUGCの二次活用は、別々の作業に見えて成果としてつながります。自館の運用が、投稿してもらう仕組みと投稿を再配置する仕組みの両方を備えているかを見直す材料になります。


ハッシュタグ・リール・ストーリーズの使い分け

ハッシュタグや投稿形式は、目的ごとに使い分けることで効果を発揮します。

下呂松葉では、ハッシュタグの数よりも、観光客が検索しそうな語を選んでつけています。立地×グルメの#飛騨グルメ、立地×利用動機の#下呂温泉#ランチなどが例として挙げられます(参照*6)。

同じ事例では、短尺動画のリールは通常の投稿に比べて拡散性が強く、フォロワーではない方にも表示されるため、新規のお客様の流入が期待できるとしています。24時間で表示が消えるストーリーズは、毎日更新することで接触頻度を高めやすい発信手法として紹介されています(参照*6)。

検索行動を意識したハッシュタグと、拡散や接触頻度を高める投稿形式は、役割が異なります。自館の投稿ごとに、発見してもらう役割か、思い出してもらう役割かを分けて設計する視点が有効です。


施設集客で陥りがちな失敗と改善策

施設集客では、横並び発想や感覚頼りの判断が話題化を妨げる要因になります。


横並び発想と感覚頼りの判断

他館の取り組みをなぞる発想は、話題化の芽を摘みます。

多くのレジャー施設では、「近隣の他施設がこれをやっているから、うちもやろう」という横並びの思考に陥りがちです。しかし、それでは顧客から見てどこも同じに見えてしまいます(参照*4)。

価格の納得感をつくる第一歩は、曖昧な形容詞を捨て、具体で語ることです。「厳選」「こだわり」「おもてなし」といったよくある言葉を使いたくなったら、一度立ち止まり、「私たちは具体的に何をしているのか」と自問することが推奨されています(参照*7)。

横並びの発想と抽象的な言葉は、投稿する側の話題にもつながりにくくなります。自館の発信を、他施設と入れ替えても違和感がないかどうかで点検する視点が役立ちます。


リピーター化を阻む「ちょっとした不便」

新規獲得だけでなく、リピートを止める要因を潰すことが、話題化を続ける前提になります。

リピートを阻害する要因を特定するには、顧客満足度(CS)調査が有効です。「また来たい」と思わなかった理由は、大きなトラブルではなくちょっとした不便の積み重ねであることが多いとされています(参照*4)。

不便の積み重ねは、投稿の熱量を下げ、次の来館の判断にも影響します。自館の体験のどこに小さな引っかかりがあるかを、来館者の声から拾い直す作業が改善の起点になります。


話題化を集客成果につなげる実践ポイント

話題化を集客成果へとつなげるには、UGCを起点にした導線設計と、データに基づく改善サイクルが欠かせません。


UGCを起点にした来館導線設計

UGCを起点に据えると、集客の導線がSNS上の投稿から館内体験まで一本の線でつながります。

ニフレルでは、Instagram投稿を活用し、施設を訪れたお客様が投稿してくれた写真や感想を軸にターゲットを拡大する施策として、UGC活用ツールのLetroを導入しました。効率的なコンテンツ制作を実現しながら、施設のさまざまな楽しみ方をより魅力的に伝えるサイトコンテンツの充実を目指しています(参照*3)。

UGCを公式サイトのコンテンツに再配置すれば、投稿が新規来館者にとっての比較材料になります。自館の導線が、投稿の入口と受け皿の両方を備えているかを確かめる基準として使えます。


データに基づく施策改善サイクル

感覚で回す運用から、データで確かめる運用への移行が、話題化を成果に変える近道です。

旅行者の好みや属性、行動履歴をAIで分析することで、一人ひとりに合った体験型プランや回遊ルートを提案でき、満足度の高いサービスにつながります。結果として、無駄のないマーケティングが実現し、観光地全体の収益向上につながるとされています(参照*8)。

観光地に関するInstagram投稿を分析した研究では、次の傾向が報告されています(参照*9)。

  • 休日の投稿数は平日の2.3倍
  • 文化観光資源に関する投稿は降雨の影響を受けにくい
  • 観光地間の距離は投稿数に影響しない
  • 来訪者数の増加とともに投稿数が増える

投稿の動きは来館者の動きと連動して変化します。自館の集客施策も、投稿数や来館者属性のデータをもとに、仮説と検証を繰り返す運用に切り替える余地があります。


おわりに

SNS映えを起点とした話題化は、来館者自身の発信を軸にした施設集客へと形を変えています。数値で確認できるように、施設からの情報発信もSNSでの口コミも、来館行動を動かす力を持つようになっています。

話題になる施設は、限定性のある体験と、多様な層に届く見せ方、そして投稿を受け止める導線を備えています。自館の発信と体験を、投稿の起こりやすさとリピートのしやすさという二つの軸で見直すことが、次の一歩の起点になります。