今すぐ導入したくなる体験コンテンツ5選

はじめに

体験型コンテンツの導入は、遊園地やアミューズメントパークの差別化を左右する要素になっています。もしターゲットや費用対効果を考えずに導入を進めると、投資に見合う成果が得られないまま運営負担だけが増えるリスクがあります。

成功のカギは、施設の規模や客層に合った体験型コンテンツを選び、目標指標を設計したうえで導入することです。本記事では、市場の動向から選定基準、具体的なコンテンツ5選と導入時の注意点までを順に解説します。



体験型コンテンツが求められる背景


LBE市場の急成長と数値動向

体験型コンテンツの需要を裏づけるのが、ロケーション・ベースド・エンターテインメント(LBE)すなわち施設型の体験娯楽市場の急拡大です。世界のLBE市場規模は2025年時点で約73億9,420万ドルと推計されており、2033年には約492億4,370万ドルに達する見通しで、2026年から2033年の年平均成長率は26.2%と予測されています。利用形態別では、遊園地(アミューズメントパーク)が2025年に35%超の最大シェアを占めました(参照*1)。

国内でも体験型消費の伸びが見られます。国内の体験型消費市場はコロナ禍後に急成長し、2022年以降はとくにアウトドアやアドベンチャー系の体験型施設で利用者数が増加傾向にあります(参照*2)。こうした数値は、遊園地やアミューズメントパークが体験型コンテンツの導入を検討するうえで、市場全体の追い風を示す材料となります。


「モノ消費」から「コト消費」への転換

施設が体験型コンテンツを導入する理由のひとつに、消費者の志向変化があります。従来のアミューズメント施設はゲームや遊具を楽しむ空間としての役割が強かったものの、現在ではデジタル技術やストーリーテリングを取り入れた体験型エンターテインメントへと進化しています。訪れるだけでなく「参加し、記憶に残す」施設へのシフトが進んでおり、アミューズメント施設やパークはレジャー産業における戦略的なコンテンツとして位置づけられるようになりました(参照*3)。

体験価値の強化は、チケットやグッズ、飲食といった複数の消費を促す導線設計を可能にします。施設の魅力を「モノ消費」から「コト消費」へ拡張することで競争優位性の獲得にもつながるため、体験型コンテンツの導入を考える際には、この消費トレンドの転換を前提に据えることが欠かせません。


導入前に押さえる選定基準


ターゲット層と施設規模の整合

体験型コンテンツの導入を成功させるには、まず「誰に届けるか」を決めることが出発点になります。ターゲットを絞らず漠然としたテーマのイベントを開催しても注目が集まらず、来場を促せない可能性があります。そのため、どのような客層を取り入れたいのかを最初に明確にする必要があります(参照*4)。

施設の規模や既存設備との適合性も見落とせません。テーマパークのコンテンツにはアトラクションをさす「ハード」と、サービスやイベントをさす「ソフト」の2つがあります。ジェットコースターのようなハード面の投資は巨額の費用を伴い、大きなリスクが懸念されます(参照*5)。ターゲット層と施設規模を照らし合わせたうえで、ハードとソフトのどちらに投資するかを判断することが、体験型コンテンツの導入における最初の分岐点です。


コスト・KPI・効果測定の設計

体験型コンテンツの導入では、投資額だけでなく、成果をどう測るかの設計も不可欠です。リアルイベントを成功させるには、あらかじめ目的やKPI(目標となる指標)を設定したうえで、企画内容やターゲット、告知方法を検討して実施する必要があります。リアルイベントの場合、来場者数や来場者による売上などを指標とするのが一般的です(参照*6)。

デジタル技術を活用した体験型コンテンツには、参加者の行動データを収集できる利点があります。アクセスデータやログをもとに、実施後の定量的な分析やKPIの振り返りに活用できるため(参照*7)、導入前にKPIを定め、効果測定の仕組みをセットで設計しておくと、次回以降のコンテンツ改善にも役立ちます。


体験コンテンツ5選の全体像

施設型の体験娯楽市場は多様化が進んでおり、VR・AR・MRといった没入型技術が来場者のコンテンツへの関わり方を変えつつあります。これらの技術はリアルで双方向的な体験を可能にし、来場者の滞在時間を長くする効果が期待されています。さらに、施設内にインタラクティブな要素を組み込み、利用者ごとに体験を個別化する流れも広がっています(参照*1)。

ここからは、導入形態や投資規模の異なる5つの体験型コンテンツを取り上げ、それぞれの特徴と導入事例を紹介します。


コンテンツ1:インタラクティブダークライド

● 仕組みと技術要素

インタラクティブダークライドは、暗い屋内空間を走行するライドに、来場者自身が参加するゲーム要素を組み合わせたアトラクションです。レーザーバーコードスキャンシステムを用いることで、スクリーン上のコンテンツ、3D画像、決まった時間に応じたターゲットを含むライド内のすべてのメディアを制御できます。この技術は3Dメディアシーンを物理的な要素や、来場者がスキャンして「収集」する移動ターゲットとシームレスに統合します(参照*8)。

VRやAR技術を活用した没入体験は、従来の娯楽では到達できないレベルの没入感と双方向性を提供し、施設型エンターテインメントへ消費者を引きつける要因となっています(参照*9)。ハード面の大型投資にはなるものの、技術が進化するほど体験の幅が広がる領域です。

● Hersheypark・Warner Bros.の導入事例

インタラクティブダークライドの導入事例として、まず米国のHersheyparkが挙げられます。同施設に導入されたインタラクティブダークライドは、チョコレートとピーナッツバターをテーマにした多段階のゲームプレイが特徴です。世界最多のターゲット数と6種類のプレイ方法を備えており、インタラクティブなゲーム検知技術がターゲット処理の新記録を打ち立てました(参照*10)。

もうひとつの事例は、アブダビのWarner Bros. World Abu Dhabiです。同施設ではレーザーバーコードスキャンシステムを核とした、3Dメディアシーンと物理的なセット、移動ターゲットを一体化させたライドが運営されています(参照*8)。いずれの施設も、テーマ性と技術力を掛け合わせることで、来場者が繰り返し乗りたくなるリピート要素を生み出しています。


コンテンツ2:AR回遊体験・スタンプラリー

● ARスタンプラリーの導入メリット

デジタルスタンプラリーとは、スマートフォンやタブレットを使って指定されたチェックポイントを巡り、デジタルスタンプを集めるイベントシステムです。QRコードのスキャンやGPS位置情報、さらにはNFCタグなど、デジタル技術を活用した多様なスタンプ取得方法が用意されています(参照*11)。

導入のメリットとして、参加者の行動データを収集できる点が大きいです。専用サイトやアプリのアクセスデータやログをもとに、実施後の定量的な分析やキャンペーンの効果測定が行いやすくなります(参照*7)。体験型コンテンツの導入において、投資対効果を数値で検証したい施設には適した選択肢です。

● LEGOLAND Windsor・施設回遊の実績

AR回遊体験の導入実績として、英国のLEGOLAND Windsorの事例が参考になります。同施設では、来場者がARポータル体験でひとつの像に対して平均2分30秒以上を費やしました。2021年5月の開始から同年9月までの累計で、来場者がアプリ内のAR体験に費やした時間は合計114日と12時間に達しています。このキャンペーンはBlooloop Innovation銅賞を受賞し、審査員から高い評価を得ました(参照*12)。

ARを組み合わせた回遊コンテンツは、来場者の滞在時間と施設内の移動距離を伸ばす可能性があります。ひとつのチェックポイントに2分半以上留まるという数値は、施設内の飲食やグッズ販売への接触機会を増やす導線として機能し得るため、導入を検討する施設にとって有力な判断材料になります。


コンテンツ3:謎解き・宝探しイベント

● 低コスト導入と回遊効果

謎解きや宝探しイベントは、ソフト面の導入として比較的低コストで始めやすい体験型コンテンツです。今ある設備を利用するので大規模な工事が不要で、一部のエリアが工事中になって来場者をがっかりさせる心配もありません。一度必要なものをセットしてしまえばスタッフの手間はほとんどかからず、人件費の削減にもつながり、撤収もスムーズに行えます(参照*5)。

周遊型の謎解きイベントは、参加のハードルが低い点も特徴です。参加者は時間や場所に縛られず好きなタイミングに好きな場所からスタートでき、特別な装飾や演者を用意する必要もないのでコストを抑えられます。既存の施設リソースを活かせる点が、謎解き・宝探しイベントの導入を後押しする理由です。

● 国内テーマパークでの成功事例

謎解き・宝探しイベントは、さまざまなテーマでストーリーを展開できるのが特徴です。レジャー施設のコンセプトや魅力に合わせたストーリーに沿って来場者が施設内を巡ることで、まるで物語の登場人物になったかのような気分を味わい、ひとつの物語に没入する体験が生まれます。導入した結果、よみうりランドや鈴鹿サーキット、ひらかたパークなどのテーマパークで入場者数が増加しています(参照*4)。

拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の技術と組み合わせた展開も広がっています。テーマパーク内の特定ポイントを巡る「AR宝探し」イベントや、園内の歴史や自然をARで学べる体験型のARガイドツアーなど、デジタル技術を取り入れることで体験の深みを増す工夫が可能です(参照*2)。既存の施設にストーリーとデジタル技術を掛け合わせることで、低コストながら来場者の記憶に残る体験型コンテンツへと仕上げられます。


コンテンツ4:体験写真・フォトシステム

● 体験写真で売上と認知拡大を後押し

アミューズメント向け写真システムは、遊園地・観光地・テーマパークなどの運営事業者に対し、写真とプリントを活用したサービスのプランニングとシステム構築を提供するものです(参照*13)。ライドやショーの瞬間を自動撮影し、来場者がその場で購入できる仕組みを導入すれば、チケット収入以外の新しい売上源を確保できます。

体験写真システムの強みは、施設の魅力を「コト消費」へ拡張しやすい点にあります。チケット、グッズ、飲食といった多様な消費を促す導線設計が可能になり、エンターテインメント性を付加することで競争優位性の獲得にもつながります(参照*3)。写真という「持ち帰れる体験」はSNSへの投稿にも直結するため、施設の認知拡大を後押しする媒体としても機能します。

● Six Flagsに見る体験設計のデジタル化

大規模施設では、複数のパークを横断した統合的な来場者体験の設計も行われています。米国の大手テーマパークチェーンであるSix Flagsでは、26のパークすべてのマップを統合プラットフォームに集約し、来場者が旅行の計画からパーク内の移動、体験全体を通じて直感的に操作できるソリューションを導入しました(参照*14)。具体的には、公式アプリ上でリアルタイムの現在地表示や目的地までのナビゲーション、飲食・トイレ・物販などの施設検索、イベントに合わせたテーママップの表示などを可能にしています。

こうした仕組みは、来場者の利便性を高めるだけでなく、施設側が人気アトラクションや検索傾向を把握し、運営改善に役立てるためのデータ基盤にもなります。フォトシステムもこのようなデジタル基盤と連携させることで、撮影地点への誘導、写真購入導線の最適化、イベント限定フォト企画などに展開しやすくなり、体験型コンテンツとしての価値がさらに高まります。


コンテンツ5:インタラクティブ動画コンテンツ

● インタラクティブ動画で熱量を可視化

インタラクティブ動画とは、視聴者が画面内のボタンやリンクをタップして選択肢を選びながら進められる動画形式です。ある導入事例では、体験コンテンツにより「ファンの熱量」を高め、それをデータとして把握することに成功しました。総タップ数は7万回以上、1視聴あたりのタップ数は平均17回、平均視聴時間は2分半に達しています。投稿当時の時点で20,000回再生、シェア率34%という高い数値も記録されました(参照*15)。

こうした動画は、施設の来場前・来場中・来場後の接点づくりにも活用できます。たとえば、来場前にはおすすめコース診断やイベント紹介、来場中には園内回遊を促すクイズやミッション、来場後には思い出の振り返りや再来場を促すコンテンツとして展開できます。視聴者の選択データを蓄積すれば、関心の高いテーマや体験傾向の把握にもつながります。

● ハイブリッド型没入体験の広がり

施設型エンターテインメントの領域では、「ハイブリッド型」の没入体験が増えています。たとえば、Strange Bird Immersiveでは、脱出ゲームに没入型シアターの要素を組み込んだ体験が展開されています。また、Atlas 9のインタラクティブアート空間では、没入型アート、没入型シアター、ゲームを融合した体験が提供されており、FuzionGamzでは、レーザータグ、脱出ゲーム、ビデオゲームを組み合わせた没入型ゲーム体験が紹介されています(参照*16)。

さらに、AR・VRなどの技術を活用した施設型コンテンツも広がっています。参考文献では、米国メイン州のBEE VR Theme Parkが、フリーロームVRや実験的なAR・VR体験を、従来型のビデオアーケードゲームなどと組み合わせ、多様な来場者層に対応している事例として挙げられています(参照*16)。こうした動きは、単体のアトラクションを楽しむだけでなく、演劇性、ゲーム性、身体性、デジタル体験を横断して来場者を巻き込む方向に進んでいるといえます。インタラクティブ動画も、選択や分岐を通じて来場者の関与を高められるため、こうした個別化・参加型体験の流れを施設の内外で展開できる手段として選択肢に入ります。


導入時の注意点と失敗回避策

体験型コンテンツでは、導入後にコンテンツの鮮度を保つ運用が課題になりやすいです。一度来場した顧客が再訪する理由を提供するには、施設内容の刷新やイベント運営が欠かせません。また、安全管理と法令遵守も不可欠で、遊具の整備点検、スタッフの配置、年齢制限など細かな運営ルールの整備が求められます。さらに、多様な顧客対応やイベント運営には接客・保安の両面でのスキルが必要であり、人手不足と教育の課題にも対策を講じなければなりません(参照*3)。

デジタル技術を使った体験型コンテンツでは、操作のわかりやすさが成否を分けます。システムや操作に関してわかりにくい点があると運営側への問い合わせが増え、工数削減というメリットが帳消しになりかねません。企画やユーザーインターフェース(UI)のテスト段階で、誰でも参加しやすい設計になっているかを検証することが失敗回避の基本です(参照*7)。

導入コストを抑えたい場合は、周遊型の謎解きイベントのようにソフト面から始める方法もあります。参加者が時間や場所に縛られず好きなタイミングでスタートでき、特別な装飾や演者を用意する必要もないためコストを抑えられます(参照*5)。まず小規模なソフトコンテンツで効果を測定し、結果を踏まえてハード面への投資判断を行うという段階的な進め方がリスクの軽減に役立ちます。


おわりに

体験型コンテンツの導入を成功させるには、市場動向の把握、ターゲットと施設規模への適合、KPIの設計という3つのステップが欠かせません。そのうえで、本記事で紹介した5つのコンテンツのように投資規模や技術要件が異なる選択肢を比較し、自施設に合った組み合わせを見極めることが大切です。

まずは低コストで始められるソフト面の体験型コンテンツから導入し、得られたデータをもとに次の一手を判断する流れが、リスクを抑えながら体験価値を高める近道です。


参照

(*1) Location-based Entertainment Market | Industry Report, 2033

(*2) イベントアイテムのワン・ステップ | エアー遊具・乗り物・カーニバルゲーム・イベント遊具のレンタル・運営・企画 – 公園・遊園地のリニューアルで集客UP!ターゲットを惹きつける施策とは?

(*3) 【専門知識解説】レジャー産業における「アミューズメント(施設・パーク)」とは?運営の課題や経営的利点も解説!

(*4) タカラッシュ – レジャー施設の集客を成功させるには?おすすめの集客イベントも紹介

(*5) IKUSA.jp – 宝探しをテーマパークで実施するメリットとは|具体例も紹介

(*6) BALANCe Magazine|BALANCe Inc. – リアルイベントで集客を成功させるには?面白い企画を事例とともに紹介

(*7) BALANCe Magazine|BALANCe Inc. – デジタルスタンプラリーとは?作り方やメリット、費用まで徹底解説

(*8) Warner Bros. World Abu Dhabi

(*9) North America Location-based Entertainment Market

(*10) Alterface Interactive Dark Rides – Alterface interactive game detection system sets record at Cupfusion in Hersheypark

(*11) furari|デジタルスタンプラリー(アプリ版・WEB版両対応+AI分析) | – デジタルスタンプラリーの全てがわかる!導入のメリットと成功のコツ

(*12) Zappar – How LEGOLAND® increased park dwell time with AR

(*13) アミューズメント向け写真システム

(*14) Concept3D – Six Flags | Case Studies | Concept3D

(*15) MIL – 導入事例 |新規キャラクターの世界観をSNS上で体験する「インタラクティブコンテンツ」を展開!ファンの熱量アップと可視化に成功!| インタラクティブ動画制作プラットフォーム「MIL(ミル)」

(*16) Leisure Insight – Transforming the Immersive LBE Landscape